「科学技術週間」――“科学する心”よ 育て

 「どうして空は落ちてこないの?」――「私たちの周りを囲んでいる山には、とっても大きな水牛がいて、水牛には、とっても大きな角があって、それがお空を支えてくれているんだよ。だから、空は落ちてなんかこないよ」。

 植樹運動で有名なノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ博士が幼いころ母と交わした会話。マータイ博士は、母から自然環境への敬意と考え方を学んだという。

 身近な「なぜ?」「どうして?」という問いかけから、科学は始まる。物事の真理を探求していく中で、因果や道理を理解し、真実の幸福や平和を求める心が育っていく。子どもたちの「なぜ」を大切にし、誠実に応え、“科学する心”を伸ばしていきたい。

 「物事を考える視点が“自分”から“日本”、そして“地球”“宇宙”へと広がりました」――宇宙から地表を撮影した写真を見た関西創価学園卒業生の声だ。

 関西学園は、NASAアメリカ航空宇宙局)の教育プログラム「アースカム」にいち早く取り組んできた。アースカムは、国際宇宙ステーションに搭載されたカメラを、学園から遠隔操作して、地表写真を撮影するもの。学園は、その写真から「サンゴ礁の白化現象」などの研究を重ね、昨年、気候変動分析ミッションで最優秀賞の栄誉に輝いた。

 科学は、普段の生活では全く気付かないところにも新しい視点をもたらしてくれる。

 人類は科学によって、豊かな生活を獲得した一方、資源の枯渇や地球温暖化等の問題を生み出してしまった。一人の人間の行動と地球が直接つながっていることを環境問題は如実に物語っている。

 最先端の技術も、使う人間しだい。人間自身の「境涯」を広げる仏法哲学こそ、科学文明をリードする慈悲と英知の源泉である。

 池田名誉会長は、ジョセフ・ロートブラット博士との対談で「人類が手にした知識を、人間の幸福のために、どう生かしていくか。人間は、その知恵を持たねばならない」と語っている(『地球平和への探究』潮出版社刊)。

 今週は「科学技術週間」(20日まで)。全国各地の科学館・大学などで、科学に関する講演会・展覧会などの催しが開かれている。

 親子連れなどで科学の世界を訪ね、あらためて“地球市民として自分にできること”を考えてみよう。その問いかけから、21世紀のキュリー夫人アインシュタインが生まれるかもしれない。(08.04.16:聖教新聞社説より)