小説「新・人間革命」



〈小説「新・人間革命」〉 常楽 五十七 2016年3月9日

 法悟空 内田健一郎 画 (5745)

 二十二年前に山本伸一と食事をしながら懇談した人たちは、その時に出し合った食事代が百円であったことから、「百円会」という名をつけ、以来、共に広布の誓いに生きようと励まし合いながら、前進してきたのだ。
 人生には、さまざまな思い出や、転機となる出会いがある。それを大切にし、心の宝物としている人は強い。負けない。何かあった時に、返るべき発心の原点があるからだ。
 このメンバーは、伸一との誓いを深く胸に刻み、友の激励に、弘教にと奔走し、人生の凱歌を轟かせてきたのだ。
 今、頰を紅潮させて、奮闘の来し方を報告する同志の姿は、たくましく、尊かった。
 「皆さんは、本当によく頑張ってくださった。私は、それが嬉しいんです。一人ひとりが庶民の大英雄です。
 ところで、『百円会』という名前ですが、新しい名称にして再出発しませんか。『百円会』は、開けっぴろげで、いかにも大阪らしいのですが、もう少しセンスがある名前の方がいいんじゃないですか」
 朗らかな笑いが広がった。
 「こんなに美しい菊のなかで再会したんですから、『菊花会』としてはどうでしょうか」
 賛同の拍手が沸き起こった。
 さらに彼は、句を詠み、贈った。
 「なつかしや 遂にあいたり 菊花会」
 泉州文化会館の開館記念勤行会は午後六時前から開始され、伸一の導師で厳粛に勤行・唱題した。地元幹部のあいさつ、表彰に続いて、婦人部と女子部の合唱団が、「母の曲」、関西の歌「常勝の空」、さらに、皆が初めて聴く新曲をはつらつと歌い上げていった。
   
 〽堂々と 王者の城か 泉州
  友らがつくりし 人材の石垣
   
 伸一が、二年半ほど前に、泉州の友に贈った和歌に曲をつけ、「王者の城」と題して披露したのだ。彼は、皆の気持ちが嬉しく、“ありがとう!”と心で叫んでいた。